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東京都美術館で開催の吉田博展は面白かった! [アート]

家から上野は近いので、東京都美術館で開催されている『吉田博展』に行ってきました。山梨、福岡、京都での開催を終え、東京会場にやってきた展覧会だよ。

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吉田博は明治〜昭和にかけて活躍した風景画家です。でも日本よりも海外でのほうが有名かもしれないです。私が初めてこの人の作品を知ったのは2017年。展覧会を観るのは今回で2回目^^
2017年に損保ジャパン日本興亜美術館で観たときは風景画・戦争画が主だったんだけど、今回は日本の町並みのなかに人々が描かれたものも多くて面白かったです。

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もともとは水彩&油絵を描いていた吉田博。
大正時代に描いた油絵『穂高山』は、とてもダイナミックで引き込まれそう。

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吉田博は何度も海外に行く機会があって、そこで日本の浮世絵が人気なのを知るの。そして「江戸時代のこんなちゃっちい浮世絵が人気だなんて、ちゃんちゃらおかしいぜ!オレがオレだけにしか作れない版画の世界を見せてやる!」(私による意訳ありw)って思って版画家に転向するのです。

版画界では、江戸時代に確立した方法を継承するのが定番だったようなんだけど、吉田博は洋画の技法も取り入れて、版画では表現が難しい日本の湿った空気感や西洋の光の表現に成功したのよね。

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そして、こんな風に溜息が出ちゃうような、とても版画に見えないような作品が生み出されたのでした。

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間近で観ても、これが版画??って思っちゃうのよね。
この水面の揺らめき。うっとりです。

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版画は、下絵を描く絵師、そして彫り師、摺り師のように役割があって複数の人が関わって成り立つもの。吉田博は絵師になるわけなんだけど、彫り師、摺り師が作業をしてるあいだも、必ず隣に居て指示を出していたそうな。そして彫り師では再現できないものは、自分で彫ったんだって(笑)

オウムの羽の部分は、彫り師では出来なかったみたいよ。
この画像では分からないんだけど、ふんわりとした羽を表現する空摺りのための彫りが細かくあるのです。

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江戸時代の浮世絵の摺り重ねは、平均で十数回だそうです。
だけど、吉田博は平均で三十数回擦り重ねをしてるんだって。だからこそ色の微妙なグラデーションが生まれて、版画には見えない世界になっているんだね。

そしてこの『陽明門』は、九十六回の摺り重ねで完成されているんだって。

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摺り師の人も気が遠くなっただろうなあ(笑)
単眼鏡でがっつり堪能させていただきました m(_ _)m

空いている館内で吉田博の世界を楽しみました。
寄り道はせず、さすがにランチは駅構内でお弁当を買って自宅で食べましたわ。
美術館内では一言も言葉を発せず、お弁当を買うお会計のときに「Suicaで」と喋っただけでした。電車も座らず何処にも触らず帰ってきたぞ。


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没後70年 吉田博展
東京都美術館
2021年1月26日〜3月28日
https://yoshida-exhn.jp/


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